コモディティ・スーパーサイクル. 商品先物が!

コモディティ スーパーサイクルとは?

元外資(というよりNY本部)Propトレーダーが簡単に説明するシリーズですが。久し振りの今回は株式ではなくコモディティです。Twitterで昨年から呟いたものをある程度、まとめました。私見ですが、今後の想定も。

毎10-20年に一度やってくるこのキーワード。最近、聞いている方も多いと思います。JPモルガンは今年の2月にメタルや原油の商品先物が過去100年に5度目となる高騰の周期に入ったと発表しました。その前にはGSからも同様のレポートが出ています。

最後に先週発行されたGSのアナリスト・レポートを貼っておきます。


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例として前回の4度目のスーパーサイクルを使ってもう少し掘り下げましょう。’96年から’08年までの12年間は上昇局面を迎え、’08年から’20年までの12年間の下落局面がありました。

WTI原油先物相場の場合、90年代後半は1バレル=10ドル台で始まり、リーマン・ショック直前のピーク時(08年7月)に140ドル台まで上昇。そして歴史上の過去最高値を付けました。その後、下落局面に入り、コロナ禍の20年3月に一時、マイナスになった。リーマン・ショック後は需要が減り下落。

しかしながら景気が良くなっていった局面でも大幅な上昇が起きなかったのは、2000年当初より水圧で岩盤に亀裂を入れる「高圧破砕 (Fracking)」と呼ぶ採掘技術が確立たことが下落の原因にもなっているのではないでしょうか。主にガスを採掘する時に使われる方法ですが、原油にも使われています。所謂、シェールオイル(Shale Oil)です。2010年頃からOPEC+に参加していないアメリカ合衆国やカナダで生産が増強されたのも原因です。

このFrackingは今後もバイデン政権下では話題になるキーワードだと思います。民主党では特に自然保護をモットーとしている議員はFrackingを禁止しろと唱えています。バイデン大統領とその昔、同じことを言っていたこともありました。   

なぜ起こるのか?

なぜそのようなサイクルが発生するのかというと、需要の急激な高まりが起こるからです。特に需要に変化や急激な経済活動が起こった時に特に特定の原料(メタル・原油・穀物)の高騰が起こります。そして、高騰になってもその価格は落ちることが無い可能性があるのがコモディティです。その理由は、先物価格が下落している時は投資(特に新しい鉱山、採掘所等)することは難しく、投資しても即産出とはいかないからです。

コロナ禍でそこまで景気って良くなっているのか?

コモディティ別に価格の高騰は分けて考える必要があると思います。ただし、高騰理由はある程度共通しています。テクニカルな部分は抜いて簡単に書きました。

原油
  1. コロナ発生
  2. 経済活動が世界的に止まる。特に人の移動が一気になくなる。出張、旅行、通勤等がなくなる。
  3. ガソリン、ジェット燃料などの需要が僅か二か月ほどで消える
  4. その後、感染拡大に伴い世界規模で工場も停止。原油由来の商品の製造停止。
  5. ロックダウンも重なり人の消費が止まる。服などに使われるポリエステル繊維の原料はテレフタル酸とエチレングリコールという化学物質で、もとは石油や天然ガス。
  6. 4月20日、WTI原油先物価格が史上初めてのマイナス値を記録。終値は前日の18.27ドル/バレルから、-37.63ドル/バレルに急落。かなりショッキングなニュースになりました。
  7. この後に(アメリカのシェール会社を赤字にして倒したい狙いで)ロシアが減産に消極的でしたが、OPEC+で大幅な減産合意で価格上昇を狙う。その後も減産の推移を維持。
  8. コロナウィルスの性質も理解し始めロックダウンを繰り返しながらも徐々に生産や経済活動再開。
  9. ワクチンが開発され、摂取開始。

今後のポイントとしては従来通りにOPEC+の増産状況と、特に米国の航空会社の運行状況によって値段の上下が起こると思います。

では原油は中長期ではどうか?

コロナ以前より主にヨーロッパや中国で動きがあったのが脱炭素への動き。SDGsや脱炭素の動きはコロナ禍でさらに各政府から強調されました。

過去にも不況になるとそれを打ち返す為に新しい景気を生ませる政策を行うことがありますが、脱炭素もそこに乗ったのだと思います。もしかすると、原油産出国との関係から手を少し引きたい国も出てきているのかも?とも思っています。内乱が起こったりしていると原油価格の安定化が難しく、更にG7・20諸国があまり影響を与えられないOPEC+への依存度合いも減らしたいのかも?

話は戻りますが。それならもう原油価格は下がる一方なのか?私はそうではないと思っています。

クリーンエネルギーやインフラの投資を進めるには、必ず物資の製造、移動、設置が必要であり、原油以来の製品の製造や海運、陸運、工事機械等がフルに動くのではないでしょうか。需要は’23-25年頃をピークにして’30年あたりにかけてゆっくりと落ちていき、その後は各国は掲げているゼロ目標の50年に向かって徐々にペースを上げて落ちていくのだと思います。

メタルは?

殆どのメタルは原油の経過と同じだと思います。ほとんどのメタルは、コロナ感染拡大による鉱山の一時閉鎖。特にその影響が出たのはシルバー(銀)。昨年6月に急騰した主な原因はメキシコで採掘が停止していたためです。(↓チャートの初めの円の部分)

その後の7月の急騰はゴールド(金)の高騰により思惑のマネーが急激になだれ込んだのが理由のようです。それが後半についている円の部分。その後、Redditトレードで大量のリテール・トレーダー(一般投資家・個人投機目的)が大量に狙い撃ちをして、再び高騰し落ち着いたのが現在の最近の状況。

ゴールド(金)市場

今後は米国の追加景気刺激策の投入、ワクチン接種実施率や各国での経済活動の復活を考えると、予想物価上昇率が上振れする可能性が高く、米実質金利とドルの下振れを通じて金相場には良いという見方もあるが、実際には米国金利上昇と共にデッドクロスも見せ下落を続けている。

昨年の上昇期にETF経由で入っていた資金は、昨年末にはビットコインに流入しているといわれており、その層が主にロビンフッターと言われている層なので、Redditトレードも流行っているうちは金の上昇の可能性は(流行りの対象とならない限り)低いと思います。

3月5日時点で1698ドル付近、次の大きなサポートラインは1573ドル付近。ここで横ばいのレンジに入るか、または金利上昇が続くか。

銅市場

一部のメタルは更なる需要増になると思います。特に銅は急速に進むEV車(電気自動車)への方向転換が影響していきます。原油はOPEC+や既に原油産出の施設が十分にあることで供給量を増やすことが比較的簡単にできます。

しかし、メタルは掘削作業があります。急激に需要が増えたとしても、運搬用のトラックを増やしても掘削機自体の性能が大幅に上がらないと増産はできません。しかもそのやり方だと、大幅な増産にはならないのです。

更に掘削会社としてはどうでしょうか?莫大な投資をして掘削機を増やして増産、結果的に1キロ当たりの金額が落ちてしまえば、(投資や人員増強により)掘削コストが上げて、自ら商品の価格を落とすことはしません。更には掘削場の残り年数を落とすことにも繋がり価値も下げてしまうのです。

競合相手はいますが、新規の鉱山を購入から掘削・稼働開始までは4-10年はかかるいわれています。ですので、価格の急落はその間に需要の大幅な下落がない限りおこる可能性は低いと考えています。更なる上昇もあると思います。

↑のチャートで見ると初めの円の5年間は半値以下の下落、その後、2年かけ7割ほど上昇したものの、その次の丸の2年間コロナ禍になるまで減少を続けました。価格下落の期間は新規の鉱山・採掘所の開発・投資は行いませんので、銅は需給の面からもスーパーサイクルに入ったといえると思います。

ステンレス

経済が再開すると、というより、医療の通常化が進むと手術件数も従来に戻るようになり、その関連の株銘柄だけでなくステンレス等も需要が復活すると思います。相対的には大幅な需要増とはならないかもしれませんが、そもそも住宅需要、レストランの拡大などと一緒に経済再開で増えるのではないでしょうか。

木材

木材は過去にない高騰をしています。↓が木材の価格の推移です。

この理由は主に米国での価格上昇です。昨年のロックダウン時にNYCなどの大都市から郊外の一軒家に引っ越すブームが起こったためです。

急激に感染の広まったNYCより、人口密度の低い場所に逃げ、いったん郊外の賃貸に避難。しかしそのような層はホワイトカラーが多く、リモートワークが確定したとたん一軒家を購入。しかし、’19年より一軒家の在庫が少なかったので新規一戸建てがブームに。

左が米国の住宅着工件数です。コロナ禍でいったん下落したものの一時期はその前の年を上回るまで推移しました。ほかの産業と同じくロックダウン下で建築もスローダウンしていた場所のあり、昨年9月ころにはバックログ(着工待ち)が徐々に増えていったのが、上昇の理由といえます。

現在は木材の高騰から着工を休止する案件も増えていると聞いており、もう少し価格が落ち着くとその推移でしばらくは安定するのではないでしょうか。

穀物・食肉

穀物や食肉は’07年付近の金融相場にならなければあまり影響はないと思うと言いたいのですが、実際には更に高騰すると思います。まだテクニカルな高騰理由があり、例えば、中国の経済が回復している事。世界的にワクチン接種が進んでおり、コロナ禍で急激に貯まった貯金が解放される可能性が高く、需給関係から高級品の価格も高くなる可能性があります。海運が高騰、そして遅延している事(=大量消費国での供給減)。

コーン価格が高騰しているため食肉にも影響が出てくる可能性があります。

今年の想定として頭に入れておきたいこと

米国で更なる給付金が中・低所得者層に向けて再度配られること。データとして低所得者は高所得者や富裕層より人口量や消費傾向から物の消費が多いと言われており、世界の経済再開も進むことによりコモディティは全体的に需要が高いと思っています。

コーンや小麦、豚肉等も上昇するのではないでしょうか。そして高所得者の増えた貯金が何処に行くのか?高級志向の部分で消費が行くはずです。

日本国内にいると世界の感覚がつかめないと思います。日本は経済が後退しており、世界から取り残されています。ですので、コモディティに投機・投資する場合は株より更に世界の需要と供給、更に傾向を見ていく必要があります。

それと豆知識ですが、Bondトレーダーは金利のヘッジにコモディティ(特に原油やメタル)を使います。

GSのアナリスト・レポート

JPMは原油推しですが、GSはメタル推し

最後に、先週OPEC+後のレポート